1921年に東京駿河台に西村伊作が創立し、設計した文化学院の建物をほぼ再現して1997年に開館した美術館です。学校の校舎というと兵舎のようであった時代に、英国のコテージ風に西村伊作が設計した楽しい建築と庭園は、当時話題となったものです。
この美術館を自然で独自な人格を育み、芸術的な薫りのある人間を形成する教育を目指す文化学院をより多くの人に理解してもらう場にしたいと考えています。
常設展示ではただ過去を偲ぶだけではなく、その思想、つまり大正の夢と風を受けついでいきながら新しい時代の形に変化してゆく文化学院の姿をお見せしていく予定です。 企画展示室では各方面で活躍されている芸術家の作品を毎年企画紹介していきます。
旧館長・ルヴァン美術館創設者 故 西村 八知先生 |
軽井沢の沓掛(今の中軽井沢)の星野温泉を見下せる丘の上の別荘に、西村伊作は与謝野寛、晶子たちと1週間ほど滞在していました。それは1920年のことです。、軽井沢に居た有島武郎の別荘(そこが臨終の家でした)へ馬車で訪ねたり、千ヶ滝の秋草の原に遊んだりしました。やがて彼等の間に、子供達の為に個性と自由の美しい学校を創る夢が生まれたのです。そして1921年に東京駿河台に伊作が設計した、英国のコテージ風の白壁の校舎、緑の芝生の庭で可愛い少女達の遊ぶ風景が実現したのです。それは当時の学校のイメージを変えたものとして話題となりました。
新設されたル・ヴァン美術館は、この大正の芸術家達の創った夢と風の思想を世に送るために出来たものです。この建物や庭園はなるべく創立当時の学校の雰囲気を再現しようとしたものです。自然な教育、質素でも美しい生活、これが伊作や与謝野夫妻そして石井柏亭たちの共通した思想でした。美の夢を持った西村伊作は、あえて素人(しろうと)の自由人であることを貫きました。この学校の教育者たちも職業的教師ではなく教育の素人が集まったのです。
型にはまらない教育、型にはまらない人間がそこに生まれたのです。そこには今の社会で見失いがちな教育の姿がありました。
その姿の魅力にひかれて、この学校の教育に参加した芸術家が多く、文学部では高浜虚子、菊池寛(2代文学部長、初代は与謝野寛)、川端康成、横光利一、小林秀雄、阿部知二そして4代文学部長佐藤春夫などが前期の教授陣にありました。
美術部のほうも石井柏亭を中心に赤城泰舒、中川紀元、山下新太郎、正宗得三郎、有島生馬などが親身になって参加したのです。
またその中期には今泉篤男を中心に硲伊之助、脇田和、山口薫、村井正誠、佐藤忠良、それに不定期の特別講師に棟方志功、猪熊弦一郎などが見えたものでした。
さて、文化学院のあり方ですが、それはただ美しき夢だけではなく、世間の風潮を批判し間違ったものに従わないという伝統であります。思想の貞操とでもいうものです。かつての戦時中の時局の思想に迎合しなかった唯一の学校でもありました。しかしこの文化学院は社会に対して叛逆するという気持ちでやっているわけではなく、ごく自然に本当のことをやっているだけなのです。ごく自然に、これが文化学院のあり方です。このル・ヴァン美術館の庭も、ごく自然の野原のようにと、いま庭師にいっています。良く作られた立派な庭園でなく野草のはえた野原でありたいのです。
今の社会の手のこんだ作られた教育になにか歪みを感じるこの頃、ごく自然な人間というのがどんなに貴重かと私は思っているのであります。
ルヴァン美術館の建物は、1921年に西村伊作が創立した文化学院の最初の校舎をほぼ再現しています。当時学校の校舎は殺風景な工場のようなものが多かったなか、西村伊作は、「美の教育のためには美しい学校を作らなくてはならない。(中略)学校の校舎や校庭が美しくなければならない。美しい環境が美しい心をつくる」(西村伊作人生語録『われ思う』より)という考えのもと、校舎らしくない住宅のような英国コッテージ風の建築と庭園を設計しました。
「その学校の建物は私の好きな英国コッテージ風な建物であって、それは少数の学生を入れる目的であったから学校のようには見えない。日本の学校の建物というものは非常に殺風景な工場のようなものが多かった。けれど私はそれを全く住宅のような感じに作った。ポーチがあって、それにつるバラがからまるようにしてあった。(中略)大きなカエデやマツの木などもあった。(中略)都会の真ん中にいても山の中に住んでいるように感じられるように自然の風景を模したもので、洗練された趣味のある、ランドスケープガーデニングというようなものである。」(『我に益あり 西村伊作自伝』 西村伊作)
愛らしい校舎は残念ながら創立から二年目の1923年におきた関東大震災で全焼しました。校舎の全体像をあらわす設計図や写真記録は残らなかったため、伊作の絵と授業風景や集合写真をもとに校舎の再現作業をしました。
第1回生の集合写真からおこした 復元パース図 |
2019年にルヴァン美術館の建物は軽井沢町の歴史的な価値を持つ建造物として軽井沢ブルー・プラーク認定をいただきました。
名称 | 「ルヴァン美術館」 |
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所在地 | 〒389-0111 長野県北佐久郡軽井沢町長倉957-10 |
電話 | 0267(46)1911 |
FAX | 0267(46)1910 |
設置者 | 公益財団法人軽井沢美術文化学院 |
館長 | ソノ・西村・ベガ-ト |
開館期間 | 2019年6月8日(土)〜11月4日(月) |
休館日 | 毎週水曜日(祝日時は翌日) |
無休期間 | 7月15日~9月15日 |
開館時間 | 10:00~17:00 |
入館料 | 大人:800円 大学・高校生:600円 中学・小学生:400円 (団体割引、障害者割引あり) |
展示室 | 第1室、第2室、第3室 |
遠方からいらした方は宿泊施設を利用できます。
申し込みは1週間前までに記入の上、FAXにて0267-46-1910までお送りください。
受付確認はFAXまたは電話で連絡します。確認後、利用料金を下記口座に振り込んでください。
八十二銀行 青山支店 普通預金 171217 カルイザワビジュツブンカガクイン
宿泊料金 一泊 朝・夕2食付き ¥7000 (文化学院卒業生・関係者 ¥6500)
一泊 食事なし ¥4000 (文化学院卒業生・関係者 ¥3500)
小学生以下無料
※ルヴァン美術館来館者用宿泊施設の利用の規約をご確認の上お申し込みください。
申込書はここからダウンロードしてください。
1.設立 |
平成17年11月17日に設立許可を取得しました当財団は、文化学院よりルヴァン美術館と西村伊作およびそのゆかりのある芸術家、文化人の作品を取得し、その保存、展示を中核としつつ、他一般の展覧会などを通じて、芸術文化への関心向上を図り、ひいては軽井沢地域の芸術文化の向上に寄与する事業を展開する目的で設立されたものです。 さて、このたび、軽井沢でルヴァン美術館を所有、運営いたしております財団法人軽井沢美術文化学院は、3月22日に長野県知事より、公益財団法人としての認可を得、4月1日付けにて登記も完了し“公益財団法人 軽井沢美術文化学院”として、新たに発足することとなりました。 これも、ひとえに日頃の皆様方の、ご支援、ご鞭撻によるものと、深く感謝申し上げます。 大正デモクラシーの時代を背景に建築、陶芸、絵画、教育と多彩な分野で業績を残した 西村伊作が東京お茶の水に創立した、文化学院の最初の校舎を復元した小さな美術館ではありますが、文化学院の”自由と美”大正の”夢と風”を代々伝えていくシンボルとして、ご来館の皆様にゆったりとした雰囲気のなかで、展示物を鑑賞していただき、庭園を楽しみながら憩いの時間を過ごしていただけるよう、今後もより一層努力してまいる所存です。 当美術館では、常設展として、西村伊作、彼と交流の深かった芸術家・文化人の作品を中心として展示するとともに、毎年、新たなテーマによる企画展、芸術家、文化人による公演、サマーコンサート、地元小、中、高学生を対象としたアートフェステイバルを行っており、これらの活動を通じて、芸術・文化をより身近なものとして、浸透させるべく努力してまいります。 以上、ここにお知らせするとともに、今後のご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げて、ご挨拶とさせていただきます。 |
平成23年5月 公益財団法人 軽井沢美術文化学院 理事長 石田研吾 |
2.役員 |
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3.評議員 |
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4.ルヴァン美術館 |
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